恋の神になれなくとも

未来の鍵は、雲の隙間から

「糸切れた凧」に憧れた頃

(2023.04.20推敲)

少しご無沙汰しておりました。

 

前の記事を見てくださった方は、「(こいつまた笠松将くんの記事を書くのでは…)」と思われたかもしれません。

 

おもんなくてすみません。御名答!(身も蓋もない)

 

「花と雨」の感想を書きます。

 

実のところ、笠松将くんが主演ということは出演作品を調べた当初から知っていたものの、なかなか「花と雨」には手が出せずにおりました。

 

というのも、自分は今までHIPHOPを少し縁遠い音楽に感じていたというか、なんとなく近づくことが許されないジャンルみたいに感じていて。敷居が高いという表現が妥当なのかはよくわかりませんが。

HIPHOPって、自分の人生経験に裏打ちされたリアリティ、みたいな部分をすごく大切にしている音楽だと思っています。

 

なのでいざ自分の実体験のない部分に触れた時、無責任に薄っぺらーーい感想を持ってしまわないか、よく分からない怖さがあったせいで、めちゃくちゃ身構えてました。

ただ、インタビューで笠松さんが「親切な映画ではないかもしれません」と話していたのを読んだときに、少し吹っ切れたというか。

まあ!いっそ私がこの映画に値しない人間なら遠慮なく置いて行ってくれという境地に至り、当初のビビリよりもSEEDAさんの見る世界や、HIPHOPの世界観に触れてみたいという好奇心の方が勝ってしまって、「花と雨」を見るに至りました。

 

※以下、映画「花と雨」のネタバレがあります。

 

・・

 

あんなこと言ってましたが、映画を見るのを怖がってた間も、SEEDAさんのアルバム「花と雨」はひたすら聴いていました。

 

見るならSEEDAさんにも、笠松さんにも失礼のない人間として、リスペクトを持って見たいと思って聴き始めたんですが。

ただ、気付けば映画見る前にアルバムの方に惹かれてしまっていて。結局ミイラ取りがミイラになった気分です(誤用)

 

自分自身HIPHOP以外の音楽もアーティストも好きですが、このアルバム「花と雨」に関してはなぜこんなに惹かれたのか、未だにうまく説明ができません。

 

自分にハスラーの経験があるわけじゃないし、栽培マンにもなったことないし、一応家賃でバイト代が飛んだこともない。「アメリカで足に3発食らった」方からしてみたら唾吐きかけたくなるような人生を送ってきたと思います。

 

けど、この自分の中の信じられるもの、カッコいいと思えるものを武器に、眼下に広がる景色を知っていながらそれでも上を見ようとするSEEDAさんのスタンスと、それがにじむ音楽が私にはとても眩しく、頭が下がりました。

 

結果、映画「花と雨」で、パーカーのフードを被った笠松くん(演じるSEEDAさん)が仲間と路地裏で「週3?それ家賃で飛んでね?」と話している風景を見た時、夢が現実になったような感動がありました。SKiTだっっっっ…!!!と声が漏れました。

 

SEEDAさんが「花と雨」をリリースした時代をリアルタイムに知ることができなかった身としては、当時のSEEDAさんの琴線や逆鱗を、笠松将くんの眼差しを通して感じられるというのがとても不思議で。

 

例えが明らかに下手なのは分かっているんですけど、幼い頃初めてディズニーランドのシンデレラ城がバスの車窓から見えて涙が出た時のあの感覚に近い。

 

アルバムって曲順や曲間の秒数も含めて作品だーみたいなことを昔何かで聞いた記憶があるんですが、今回身をもって体感した気がします。

 

道端の花束も、Live and Aloneの歌詞が書かれたメモも、そしてお姉さんとの飾り気のない絆も、確かにありました。

虫をつかせないはずの栽培マンが最後めちゃくちゃ虫付けちゃってたのもまたなんとも言えない気持ちになったり。

 

そしてSEEDAさんの見てきた視界と「花と雨」の世界を一身に背負う笠松将くんには、私が昔から感じていたHIPHOPの魅力である「リアリティ」に通ずるものがありました

「できる限り嘘を少なく」と語る笠松くんのインタビューを読み終えた今は、もう一度「花と雨」を見たい一心です。